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本の紹介;「原発安全宣言」 中村仁信 渡部昇一対談 (株)遊タイム出版発行

原発安全宣言 中村仁信 渡部昇一対談 (株)遊タイム出版発行

本書は放射線に対する誤解や極端な危険視を、放射線医学の視点から解説した本で、対談形式のため大変読みやすいものとなっています。また、人間のDNAは自然状態においても自然の放射線や体内の様々な活性酸素により日々傷を受け、それを修復している状態にあること、原爆のような急性被ばくと、今回の原子力発電事故のような放射線物質の漏れによる慢性被ばくでは、後者の場合は修復機能が働くことを本書は指摘した上で、中村氏は放射線医学研究の実験結果を次のように語っています。

「(精子の精母細胞を使った実験では)10シーベルト(1万ミリシーベルト)もの高線量を照射しますと突然変異が起こります。ところが0.2シーベルト(200ミリシーベルト)ぐらいですと、照射しない場合と比べてほとんど差がない」

この現象を中村氏は「しきい値」の範囲内とし、低線量の放射線の場合はDNAは損傷修復ができるだけではなく、むしろその修復機能が活性化することで、ガンの発生率などが下がる傾向があると述べます。これは本書後半部でも、ホルミシス効果の根拠の一つとして再び論じられ、中村氏は医学の見地から、低線量放射線によりがん発生が抑えられること、免疫機能が高まることをマウスの実験、植物栽培の効果、実際の放射線治療の体験など様々な実例を挙げて説明しています。

同時に、小出祐章氏、広瀬隆氏らの余りにも極端で非科学的な言動についても的確に批判し、前者の放射線被ばくが子供に高い確率でガンを発生させるという発言は、1シーベルト(1000ミリシーベルト)の放射線を、しかも急性に浴びた場合の事であって現状には当てはまらないことを挙げるなど、恣意的にデータの一部を反原発の主張のために利用すべきではないとしています。

そして、広島、長崎の原爆投下の悲劇が特に日本に放射線に対する恐怖感を与えたことは確かだが、渡部氏はその後、広島・長崎は特別な除染をしたわけでもなく、また広島の海から取れた魚介類、カキなどはそのまま食べられていたこともまた事実で、それで大きな問題が起きたわけでもないこと、それに比べれば福島の汚染をあれほど騒ぐ必要があるかと疑問を呈しています。

さらに渡部氏は、広島、長崎の原爆被爆は、放射線の人体への影響を知るためには大変重要なデータなのに、それに基づいた冷静な議論があまりないことを批判、中村氏も、原爆データで確認できるのは、1シーベルトを超えると9歳までの子供は大人に比べて4倍くらい癌になりやすいが、500ミリシーベルト以下だと、子供と大人に優位の差はないことだと指摘し、現在の福島での子供のがん発生率を不安に思う必要は全くないと述べています。

また、良く知られ比較されがちなチェルノブイリ事故について、また、いわゆる「内部被ばく」の危険性についても、本書ではよく私たちが目にする極端な論議は科学的には成り立たないことを述べています。このあたりは、ぜひ本書を直接お読みいただきたく思い

ます。そして重要なのは、現在福島で行われている「除染」をはっきりと批判していることで、アメリカの自然放射線量とがん死亡率を比較したデータによれば、年間2.7ミリシーベルト~3.7ミリシーベルトの州における癌発生率はアメリカの平均発生率より低く、現在の福島のレベルで広範囲の除染をする化学的な根拠はほとんどないこと、むしろ、強制的な移住によるストレスや事故による死亡の可能性が高まることを指摘し、除染の不要なことを訴えています。さらに渡部氏は、エネルギー政策の面からの原発維持の重要性を、大東亜戦争を含む様々な歴史的事例から分析し、日本のエネルギーの未来について的確な提言を行っています。本書に異論のある方もおられましょうが、少なくとも放射線の危険性は「量」、そして、「急性」の問題であって、低線量放射線を必要以上に恐怖する必要は全くなく、むしろ医学的見地からは今後そのプラス面が研究される可能性が高いことを、本書はわかりやすく説いてくださっていると思います(文責:広報部 三浦)