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【記事紹介】福島の住民がさらされている放射能は、考えられているよりもずっと少ない

「Science」掲載の記事を紹介いたします。



福島の住民がさらされている放射能は、考えられているよりもずっと少ない
カトリーヌ・コーネイ
2017年1月23日 

 シチズン・サイエンスは、通常はここまで個人的にかかわらない。2011年の日本では、東北大震災と、それに伴う津波の後、壊滅した福島第一原発の付近に住む6万5千人の市民が、被曝量の検診を受け始めた。放射線の量を測るといえば、従来は地上数百メートルを飛ぶ航空機から測定器を利用するしかなかったのだが、この従来からの方法がどの程度正確であるかは、専門家にも確信を持てる人はいなかったからである。今では、この類の研究の最初の成果が出始めており、科学者たちは、数千人の市民の検診結果を分析して、驚くべき結論に達した。日本のこの地域の航空機観測は、真の放射線量を4倍に過大に見積もっていたのである。
 「この研究者たちのしている作業は、非常に重要である。被曝した可能性のある一人一人の人のサンプルを集め、検査する統計的な試みを行っているからである」とコーヴァリスのオレゴン州立大学原子科学技術研究所の公認健康物理学者キャサリン・ヒグリーは述べている。
原発事故の後で、放射線被曝量を検査するとるというのは異例のことである。地域の住民が避難してしまう場合もある。線量計という個人用の測定器を配布する費用と手間に堪えられない場合もある。ウクライナのチェルノブイリなどの事例では、個人の被曝状況の数値を集めた研究も行われたが、それでもやはり限界があった。調査対象とすることができたのは、少人数の村落ばかりであり、事故現場から遠く離れ、時間的にもはるか後になってから行われたものが多かった。飛行機を使う方が簡単で、費用も安く、作業も迅速に運ぶことがしばしばだった。
 しかし、福島第一原発の第六原子炉から60キロしか離れていない伊達市では、事故から数か月経たないうちに、地域の役人たちが放射能測定キャンペーンを始めた。仁志田昇司市長が推進の中心人物だった。仁志田市長は、国際原子力機関の2014年の総会で(IAEA)、伊達市の放射能のレベルは、近隣の自治体と同程度ではあるが、避難命令を出すつもりはないと説明した。「我々は政府に依存すべきではなく、独自の行動を取らなければならない」と仁志田市長はこの総会で述べた。市長は、伊達市が独自の除染作業と住民一人一人の放射能被曝量の測定を始めるように命令を出した。2011年5月には、このプロジェクトに10億円の予算を計上した。
 仁志田市長の指示により、妊婦および16歳未満の子供たちが真っ先に線量計を配布された。これは、ガンマ線測定のための、キャンディ・バーの大きさのセンサーである。ガンマ線は、セシウムのような放射性元素から放出される高エネルギーの電磁波であり、DNAに損傷を与え、癌を引き起こす可能性がある。約九千の線量計が子供や妊婦に配布された。伊達市では、この測定プロジェクトの規模を拡大した。2012年までには、伊達市の約6万5千の住民の全員にセンサーが行き渡った。住民は、三ケ月ごとに線量計を提出し、分析してもらうことになっている。5万2千人以上の住民が、この調査に少なくとも一年は参加した。
 その間にも、政府は、航空機を使って、福島県の放射能測定を六回行った。ヘリコプターに付けたセンサーが地上の放射性セシウムの量を測定し、研究者が換算法を使って、そのデータを、地上レベルでの値に換算する。多くの人は、たいていの時間は屋内で生活しており、その間は放射線を吸収する建物の中で保護されている。そこで、政府の科学者たちは、一歩進んで、測定された放射線汚染のうち、現実に地上の物体に到達した分は60%に過ぎないと想定した。この測定は、人間は毎日8時間を屋外で、16時間を屋内で過ごすという標準的な仮定に基づいている。福島県立医科大学の放射線健康管理学者・宮崎真と、東大の物理学者・早野龍五は、伊達市の線量計から得られた何千ものデータの数値を取って、ヘリコプターのデータから得られた地上レベルの数値と照合した。この科学者たちの結論は、現実の被曝量は、ヘリコプターの測定値を地上でのレベルに換算した量のほぼ15%に過ぎないということだった。この事実を、彼らは先月、Journal of Radiological Protectionに発表した。その数値は、日本政府が以前想定していた量の4分の1以下である。
 これほど数値が違っていることについて、研究者たちはさまざまな理由を指摘している。うち主な理由は、「住民たちは毎日8時間も屋外で過ごしはしない」というものであり、宮﨑もこれに同意している。宮﨑によると、ヘリコプターでの調査に基づいた放射線量——およびそこから出てくる潜在的な健康への影響——にはかなり問題があり、研究者たちは見直しをする必要があるとのこと。そして、宮﨑は自分たちの出した結果が、その見直しのために役立つのではないかと期待している。個人レベル測定によるより現実的な放射能汚染レベルの見直しが行われれば、避難している人々は早期に帰宅することができるようになるかも知れない、とHigleyは指摘する。
 伊達市の住民にとっては、放射線のレベルが予想よりも低かったということは、良いニュースである。しかし、この結果は必ずしもは手放しに喜んではいられない。伊達市でも莫大な金と時間を使って、表土や樹皮の除去するなどという除染作業が行われている。こういう努力全てが不必要なものだったということにもなりかねないのである。