カテゴリー

書評「福島を原発の風評被害から救え」 中村仁信

書評「福島を原発の風評被害から救え」 中村仁信

 

 本書は一般書籍ではなく、宗教法人念法眞教発行の「鶯乃声」平成267月号から12月号に連載されたインタビューを編集したパンフレットです。東日本大震災以後の様々な風評についての過ちと、放射線の基礎知識を学ぶためのわかりやすくかつ総合的な入門書となっており、このホームページでも紹介させていただきます。

 

第一章の「放射線に対する誤解や勘違いを正す」の冒頭にて、中村先生は「これまでも、これからも、放射線による被害が出ることはありえない」と明確に言い切っています。国連が、百ミリシーベルト以下の低線量は問題ないとみなしていること、アメリカにおける50州のうち8州の平時の平均被ばく線量は27ミリシーベルトを超えているのに、癌の死亡率はむしろ他州より低いことなどの実例を挙げ、現在の日本が1ミリシーベルトにこだわる必要はないことをまず実証的に指摘しています。そして、放射線を浴びた後での人体のメカニズムを、活性酵素によるDNAへの損傷と、それを修復しようとするときに生じる突然変異だと説明した上で、だからと言ってこの突然変異がガンの発生に直接結びつくとは言い切れないこと、放射線に関わりなく人間の細胞には一日当たり数万単位でDNA損傷が起きていることなどを挙げ、冷静な議論のための基本を学ばせてくれます。

 

その上で、放射線を浴びることにより免疫力が低下し、癌になりやすいという俗説に対し、それは高線量の被ばくで起きることで100ミリシーベルト以下の場合はむしろ免疫力が高まるという実験結果もあること、「線量率」と「線量率効果」、つまり一瞬のうちに高線量を浴びることと、1年かけて浴びることではまったく意味が違うことなど、この問題を考える上での基礎的な知識が示されます。

 

その上で第2章「放射線の現在、子供の被ばく、甲状腺がん」では、ベクレル、シーベルト、グレイなど、中々素人にはわかりやすい単為が説明されたのち、ベクレルとは放射線を出す能力、放射線の強さを表す単位であり、現在敷かれている食品や水の放射能規制は余りにも厳しすぎることが指摘されます。

例えば飲料水は、現在日本国内では1キログラム当たり10ベクレルが基準値となっており、米国、EUはそれぞれ1200ベクレル、1000ベクレル(なお、WHO,FAOによる国際食品規格は1000ベクレル)。この視点から、現在騒がれがちな汚染水の問題も考えてみるべきだと中村先生は指摘しています。

 

また、しばしば危惧される子供の被ばくに対しても、小児が必ずしもガンになりやすいとは言い切れないこと(免疫力が高いなどから)よく例に挙げられるチェルノブイリ事故では、放射性排出物が福島の10倍であり、しかも食品の流通制限が行われず、放射性ヨウ素入りの牛乳を多くの人が飲んだこと、元々食生活上内陸部のチェルノブイリはヨウ素不足になりやすかったことなどによってたしかに甲状腺がんが増えたけれども、逆に甲状腺がんが発病した18歳未満の子供6845人のうち、死亡したのは15人であること、これは悪性率の低い癌だったことなどが説明されます。中村先生はがんの専門家として、福島の線量で甲状腺がんが増えるとは考え難いこと、かつ、チェルノブイリでもがん患者の増加は19864月の事故から4年後の1990年からであり、ここ数年の数字を議論することは意味がないことをきちんと指摘した上で、元々甲状腺がんは10人に一人の頻度で表れてくる可能性のある病気であり、総てを放射線のせいにすることの無意味さも指摘しています。

 

3章では、放射線は如何に微量でも健康被害をもたらすとしたマラーの実験の過ちや、宇宙飛行士の浴びている放射線量について述べられ、さらに第4章「必要なかった強制避難と放射線恐怖の代償」では、そもそも線量の計算自体に誤りがあること、何よりも、排出されるセシウムは134137だが、134137よりも放射線量は27倍強く、測定されるセシウムの73%は134であること、そしてセシウム134の物理的半減期は2年であり、1年で理論的には22%、実際のモニタリングでは30%も減っており、現在セシウムの減衰は進んでいるはずだと中村先生は指摘します。その上で、被ばくを怖れて子供を外で遊ばせなかったり、強制避難を行ったことによって起きた被害の方がよほど深刻であることが指摘されています。

 

5章「少しの放射線は体にいい」最終章「胎児・子孫への影響、環境・エネルギー問題など」においては、ホルミシス効果についても、臨床例やパイロットの記録などから、冷静な視点で放射線の治療効果や健康増進効果について触れられます。中村先生はその上で、ラッキー博士やアリソン博士とは異なり、より慎重な立場からホルミシスについては考える立場であること、現在の放射線専門家の一般的な科学者の立場は「100ミリシーベルト以下では過剰発ガンはないが、安全とは言い切れない、調べようと思ったら数十万から数百万のデータが必要なので不明と言わざるを得ない」というものだと、放射線はどんなに僅かでも害を与えるという考えの方が実は特殊なのだという指摘がされます。その上で、チェルノブイリの立ち入り禁止区域の森でもネズミや野生動物が増えているが何ら奇形は見られないこと、原爆被害者の子供についても40年以上の大規模な調査により遺伝的影響は実はみられていないことなど、被ばくによる子孫への影響など考える必要はないことが実証されつつあることが説明されています。

 

本書御希望の方は、放射線の正しい知識を普及する会事務局まで、メールなどでご連絡ください。(広報 三浦)