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地球を救う夢のテクノロジー 超安全小型原子炉で貧しい人たちに電気と水を  服部禎男工学博士講演会報告(上)

 9月7日、桐生市地域地場産業振興センターにて、元電力中央研究所名誉特別顧問、服部禎男工学博士の講演会が開催された。会場はほぼ満員、東日本大震災から2年間を経て、原発問題でも冷静で未来志向の議論ができる状況になりつつあることを示す盛況ぶりだった。
 まず服部氏は前半「DNAは放射能が大好き」という刺激的なテーマで講演をはじめた。以下はその要約である。
 まず、1927年にテキサスでマラー氏が、ショウジョウバエに様々なエックス線を照射し、2代目、3代目を観察した結果、当てた線量に比例して奇形が現れたり、また死んでいく例が多数見つけられ、ここからいかなる微量な放射線も生物・人体に有害であるというLNT仮説が始まったことを指摘した。しかし、これはまだDNAの存在も構造も判明していなかった時代の結論にすぎず、約40年前に判明したのは、ショウジョウバエの精子細胞は、活動期になればDNAの修復機能を失うという特殊な細胞であって、この実験結果は人類にそのまま当てはめることはできないことが分かっている。
 しかし、ICRP(国際放射線防護委員会)は、服部氏によれば、現在も放射線は少量でも有害だという原則に沿って被曝問題を論じている。しかし、1982年、トーマス・D・ラッキー博士は「線量率で、自然放射線レベルから自然放射線の一万倍(年間10シーベルト)までの定常的被曝は、免疫系を強化し、むしろ健康になり若返る」という、「放射線ホルミシス理論」を提唱、91年には「放射線ホルミシス」という本に大量の科学データと共にまとめた。
 このホルミシス理論は、日本でも80年代以後研究が行われ、1988年から98年にかけて、マウス、ラットを使った実験によれば、250ミリシーベルトの照射により、細胞膜、核膜透過性が飛躍的に若返ること、200ミリシーベルト照射で細胞内活性酸素抑制酵素の増加、又がん抑制遺伝子の活性化、糖尿病や自己免疫病の改善など、いずれも健康増進の結果が見られた。これらの研究成果は現在でも毎年シンポジウムにて新たな成果が発表されている。
 この日本での研究は米国にも影響をあたえ、1996年、ワシントンでマイロン・ポリコーブ博士、ルードウイッヒ・ファイネンデーゲン博士らの発表では「我々の細胞は、活性酸素によって常時自然放射線(年間1ミリシーベルト)の約1000万倍のアタックを受けており、毎日1個の細胞あたり100万件もDNA修復をして生命を維持している。敵は活性酸素で、DNAの修復活動こそ生命維持のすべてである」とし、この修復活動の無いショウジョウバエの実験をベースにした「LNT仮説による国際放射線防護委員会の勧告などもってのほか」という原則的な批判がなされた。
 翌1997年のセビリア会議では、WHO/IAEA共催の国際会議では、LNT仮説に基づくICRPと、遺伝子の修復活動など最新の科学研究に基づく科学者の激論となった。その後も、1998年のフランスのモーリス・チュビアーナ博士が、流産などで収集した人間の若い細胞にX線を照射し、其の結果から「1時間に10ミリシーベルト以下の線量率(自然放射線の10万倍以下)ならばDNAは充分修復され、被曝での癌になる原因は残らない」と発表。また、米国科学アカデミーのAlfred Knudson博士も、2000年から2006年までの三回の論文を通じて、マウスの精源細胞を用いた実験で、DNA異常発生率は1ミリシーベルト/時、600ミリシーベルト/時など、自然放射線の1万倍から600万倍の線量率のレベルの時にむしろDNA異常は抑えられる事が見られたとし、データを精査して、60ミリシーベルト/時から600ミリシーベルト/時の線量率領域を、最高のDNA修復が明示された領域であり、これを「シグナリングレゾナンス」と呼んだ。この研究は、今後のがん治療、がん進行抑制にも大きな効果をもたらすものである。
 このように、現在の放射線研究、放射線生物学の発展は目覚ましく、これまでのLNT仮説は実験によりほとんど意味はなく、むしろホルミシス効果の実例が次々に証明されている。確かに、まだDNAの存在も知らず、放射線についての知識も乏しかった時代、安全のためにいかなる放射線も危険だというLNT仮説が存在したことにはそれなりの意味はあったかもしれないが、現在はすでに科学の実験成果を無視した観念的な定義に過ぎず、進歩を妨げるものになっており、医学のみならず産業、経済にも悪影響を与えているというモハン・ドス博士の主張を紹介して、服部氏は結んだ。