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書評 「放射線は怖い」のウソ いちばん簡単な放射能とDNAの話

書評 「放射線は怖い」のウソ いちばん簡単な放射能とDNAの話

著者 服部禎男 かざひの文庫発行

本書は2011年8月に、武田ランダムハウスジャパンから発行されたものに、今回加筆し再発行されたものですが、本書を読みなおす時、2011年段階では東日本大震災直後ということもあり、全国民的に放射能への恐怖感があふれていた時代に、著者があくまで冷静にかつ平易な文章で、日本国民に正しい放射能への知識と、過剰な恐怖は根拠がないことを伝えていたことが分かります。

本書は質問形式で、当時国民に蔓延していた恐怖感をできるだけ網羅し、それぞれに根拠がないことを具体的に説明していきます。例えば、福島産の市場に出回っている作物や乳製品が全く安全なものであること、子供さんたちを外で遊ばせても何の問題もないこと、核兵器の爆発と原子力施設の今回の事故とを比較することも、また、チェルノブイリと比較することも全く根拠のないことなども、最初の発売当初は大変勇気のいる発言でした。しかし、大地震から時間が経過した今、完全に偏見が払しょくされたとは言えませんが、以上の面での本書の主張の正しさはしだいに国民に共有されつつあると言えましょう。科学的に妥当な言論は、時間がたてば必ず常識として国民に共有されてゆくという事実ほど、私たちに勇気を与えるものはありません。

そして本書は、平易な解説書でありながら、質問者との会話を通じて、最新の放射線研究についての入門書としての役割も果たしています。「放射能って、ちょっとでも怖いんですよね?」という問いに対し「それは全然間違っているよ。放射能はね、元々自然界に存在するものなんだ。しかもね、人間をはじめ、生物は放射能がないと生きていけないんだよ。」から始まる答えは、私のような科学的知識のない人間にも大変よく分かる解説がなされています。また、私たちがよくコンビニなどで買って飲んでいる名水には通常の20倍のラドンが含まれていること、それを飲んでも何の問題もないことなど、実例を挙げてユーモラスに紹介する本書の語り口は読み物としても楽しませてくれます。

しかし、冷静に語る著者が時に怒りを表す瞬間もあります。原爆二世、三世が、疫学的調査によって奇形やDNA異常などありえないことが証明されているのに、未だに結婚差別などがあったり、福島のお母さんたちが母乳が危険だという根拠なき説に動揺させられ、いらぬストレスを負わされたり、また未だに故郷から切り離された人々が自分の農地に戻って生活を立て直すことが出来ない現状を語るときです。そして著者はその様な偏見を助長している根本原因を、すでに過去のものとなったマラーの実験データなどに依存しているICRP体制にあることを指摘しています。科学に反する偏見や風評被害が個々人を傷つけることには、科学者として常に反論し、時には被害者を守るためには怒るべき時は怒り、権威に対しても恐れることなく抗議すべきだという著者のヒューマニズムが垣間見えます。

そして、前回本書をお求めになった方も、ぜひこの新版を手に取っていただければと思います。少なくとも、改訂版のあとがきにて、私達の会並びに放射線議連の活動と共に、フランスのモーリス・チュビアーナ博士とルードヴィッヒ・ファイネンデーゲン博士の論文、また、昨年来日されたモハン・ドス博士の論文がいずれも抄録され、現在の放射線研究の最前線を知ることが出来るからです。

最後に付け加えておかねばなりません。本書はふわこういちろう氏のイラストで飾られていますが、これがまた素晴らしく、本書の魅力を一層際立たせています。(広報 三浦)