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渡部昇一(上智大学名誉教授)服部禎男(元電力中央研究所原子力担当理事)対談

「反原発」ならバカでも言える

渡部昇一 上智大学名誉教授

服部禎男 元電力中央研究所原子力担当理事 対談(歴史通 2014年1月号掲載)

 

爆心地ではアリもミミズも生きていた-永井隆博士の科学する心を思い出せ!

広島も長崎も除染ナシ

渡部 福島原発事故の直後には「原発は危ない」という本が大量に出版されて、書店が反原発本で埋まるようなありさまでした。しばらくして服部先生をはじめとする何人かの科学者の方々から的確な批判が出て、無知による反原発騒ぎがようやく収まりかけたと思ったら、「トリックスター」の異名をとる小泉純一郎氏の「原発ゼロ」発言で火が付いて再燃してしまった。滑稽でもありますが、実に困ったことでもあります。

原発を即ゼロにしても大丈夫だという小泉発言は、日本ことを何も考えていない。無責任きわまる発言です。そして「原発」と言うだけで、「エネルギー」という言葉を使わない。エネルギーという言葉を使うとそれに替わるものがないことがわかってしまうからでしょう。ただ危ない、危ないと騒いでいる。

朝日新聞は、「原発ゼロ 首相に迫る」という大きな見出しを掲げて大喜びです。火付けしたあげく、日本の国力を奪おうというのですから、「火付盗賊」同然です。ここはささやかながら、われらは「鬼平」の役を買って出ましょうや(笑)。

服部 小泉発言には科学的な背景、根拠が何もない。私には理解できませんね。頭がおかしくなったとしか言いようがない。

渡部 ぼくが不思議に思うのは、なぜ誰も広島・長崎に言及しないのかということです。長崎で被爆した永井隆博士の『この子を残して』によると、原爆が落とされたときに、もう長崎では今後七十五年は人が住めない、草木も生えないという噂が流れた。長崎医科大の放射線の専門家だった永井博士はそんなことはないだろうと思ったけれども、人類初の経験だから何ともいえない。それで爆心地に残って研究を続けられたところ、三週間後にアリの行列を発見した。三ヵ月たったらミミズがわいてきた。

こんな小動物が何ともないのなら、その何干倍も体の大きい人間に影響があるわけがないというので、三ヵ月後、避難している人たちに長埼に戻ってくるよう呼びかけました。長崎はみごとに復興して、大きく発展している。広島でも同じように三ヵ月後にはみな戻っています。広島も長崎も除染なんかしていません。

これは服部先生のほうがよくご存じだと思いますが、このとき被爆された方たちに対して行われた調査によると、広島ではガンの発生率も他の地域に比べて高くない、奇形児の出生率も高くない。長崎でも同じでした。

服部 むしろ被爆者のほうがガンの発生率は低かった。ガンの原因はストレスです。広島・長崎では、財産も家族も失い、これからどうやって生きていこうかと絶望した方が多かった。そのストレスのせいでガンが増えたのです。ところが、ある会で私がそう発言すると、「それはタブーだ」と言われました。ストレスがガンの原因になるというのはよく知られていることではないか。広島・長崎の人たちのストレスはどれほどのものだったか。それをタブーとは何だと一喝したことがあります。

渡部 原爆と原発を混同している傾向があります。高田純先生が指摘しているように、広島・長崎で亡くなった方の大部分は熱線と家屋の倒壊によるものであって、放射線による死者は少ない。

永井博士の『この子を残して』に、焼け跡から骨になって見つかった奥さんの傍らにロザリオが残っていたという感動的な記述があります。学生時代に初めて読んだときの私はそれを、愚かにも放射線で亡くなったと思い込んでいた。ところが、読み返してみると、放射線で焼け死んだなんて永井博士はひと言も言っていない。焼死です。読むほうが勝手に放射線で亡くなったと誤解して、いまもそういう誤解が続いている。私も福島の原発事故がなければ読み返しもせず、ロザリオだけは放射線の影響を受けなかったという認識のままでいたでしょう。推測するに、小泉さんの認識もその程度だと思います。

「被爆とガン」の真実

服部 これは一九五七年の話ですが、ロシアがウラルのテチャ川流域の奥地に原子爆弾用の再処理工場を持っていた。それが爆発事故を起こし、放射性物質が大量に放出されて川に流れ込み、下流に住む何万もの人々が被曝した。そのときの詳細なデータがあるのですが、どうみてもガンの発生が通常の場合より明らかに低い。つい最近亡くなったマイロン・ポリコープというアメリカのゲノム研究の大御所が、どうしてこの事実が伏せられているのか、なぜ正面から取り上げないのかと大変怒っていました。

渡部 アメリカが一九五四年に行ったビキニ環礁の水爆実験のときも大騒ぎになりましたね。日本のマグロ漁船、第五福竜丸が巻き添えになって被爆し、〝死の灰〟をかぶって帰ってきて、無線長だった久保山愛吉さんが亡くなった。「マグロが食えなくなる」と大変な騒ぎになり、反核運動が盛り上がって「原爆許すまじ」という歌までできた。

しかし、高田先生が調べたところによると、久保山さんが亡くなったのは放射線とは無関係で、輸血のときに売血を使ったせいで急性肝炎になったのが原因だった。ぼくは初めて知ったのですが、ある医学博士は、「医者はみんな知っていますよ」と言っていました。ほかの乗組員は無事であった。ところが、多くの人たちは「放射能は怖い」と思い込んだままです。それが小泉発言に至っている。

DNAは放射線が好き

服部 フィラデルフィアのフォックス・チェース癌センターのクヌッドソン博士がDNAと放射線の関係についての大発見をアメリカの科学アカデミー報告に三回連続論文で発表しています。

マウスの精源細胞に対して、エックス線やガンマ線の線量率をどんどん上げていき、自然放射線の百万倍レベルである毎時三百ミリシーベルトあたりにDNA異常が最も少ない領域を発見したのです。「DNAが最も突然変異の少ない線量率領域をわれら見つけたり」、その領域が、いわばDNAのパラダイスなんですよ。

そしてDNAの修復活動と線量率の関係を調べてみると、DNA異常発生率は毎時一ミリシーベルトから毎時六〇〇ミリシーベルトの範囲で最低になることがわかりました。

DNA異常がとくに低いのは自然環境下においてではなく、自然放射線のほぼ一万倍から六百万倍の線量率の範囲なのです。言い換えると、自然放射線の三百万倍あたりにDNA二重鎖切断修復の最も慣れた活動のリズムがある。

これは地球が誕生してまもない時期には高い放射線レベル環境にあったということです。十億年前の地球は火山が噴火を続け、ものすごく放射線レベルが高かった。おそらく、その時期に現在の三百万倍くらいあったのでしょう。数万年前までしか調べずに、現在の五倍から七倍くらいしかなかったという学者が多いのですが、十億年前を調べていない。われわれ人類のDNAは、その高い放射線に適応して出来上がっているのです。これは驚くべき発見です。

渡部 「放射線は微量でも有害だ」ということになったのは昭和二年(一九二七)のマラーの研究が発端ですね。

服部 あれは最悪です。マラーはショウジョウバエにいろいろなレベルのエックス線を照射して、その二代目と三代目を観察した。その結果、奇形になったり、死んだり、放射線の照射線量に比例して害が出る、つまり遺伝性があるというデータが得られたのです。これがLNT仮説(Linear No-Threshold閾値〈限界値〉なし直線比例仮説)の姶まりです。

ところが戦後、DNAか発見されると、ショウジョウバエの精子の細胞は、活動期になるとDNAの修復機能がなくなる特殊な細胞であることがわかった。マラーの実験は、それが介在したものだったから、意昧がなかったのです。

渡部 しかし、マラーの「X腺の遺伝形質上の効果」に関する論文には、その年のアメリカ高等科学学会賞が贈られました。これはラマルクが提唱した体細胞起源による変異説を葬り去るほどの影響があった。とはいえ、それは進化論の世界での話ですから、一般の人は無関心でした。

ところが、思いがけないことが起こります。広島・長崎への原爆投下があり、放射線が人体に及ぼす影響、とくに遣伝子に与える影響に、世界中の人々の恐れと関心が集まりました。そこでマラーの論文が一般の人々からも脚光を浴び、遣伝子に放射線が当たると奇形児ができるということになった。そしてマラーは原爆の翌年、ノーべル生理学・医学賞を受賞しました。

マラーというのは政治的なことにも積極的な発言をする人物で、「いかなる量であっても放射線は有害であり、長期にわたって人類に危険な害を及ぼす」と主張し続けました。確かに彼の実験にごまかしはないし、結果も嘘ではなかったから、被の信念は正当なものでした。ただ、いま服部先生がおっしゃったように、ショウジョウバエの精子の細胞は修復機能がない特殊なものだった。つまり、実験素材を間違えたのです。

服部 マラーはわかっていてやったんじゃないですか。どうもいろいろな発言をしていますから。まだDNAという言葉もなかった時代のことですが、何か気がついていたのではないか。だってテキサスの入間ですよ。オイルのメジャーの本拠地ですから、どうもくさい(笑)。

渡部 先生がおっしゃったように、DNAには修復機能がある。それこそ十万年前のものすごい放射線量のなかで適応して生きてきた生物が、吹けば飛ぶような放射線量を浴びてもどうということはない。

服部 先ほど名前の出たカリフォルニア大学の大御所マイロン・ポリコーブ博士が、私のホルミシス(低レベルの放射線は生物に有益であること)研究に興味を持って、ワシントンやサンフランシスコで研究報告の場を設けてくれました。

そして、一九九六年にワシントンで私が三度目の報告をした日の夜、博士がいまから重大な発表をすると言うのです。博士は、放射線分子生物学の開祖であるルードヴィヒ・ファイネンデーゲン博士と連名で、ある大論文をまとめていたのです。ポリコーブ博士はワシントンのある屋敷で、博士が声をかけた二十五名の学者を前に、こうスピーチしました。

「われわれの細胞は、常に自然放射線(年間一ミリシーベル)の一千万倍のアタックを受け、細胞一個あたり一日に百万件もDNA修復をして生きている。敵は活性酸素で、DNAの修復活動こそ生命維侍のすべてである。マラーの実験などわれわれの細胞には何の関係もない。マラーの実験を重視したLNT仮説によるICRP(国際放射線防護委員会)の勧告など、もってのほかである」

ガッツがないから国を誤る

服部 実に激しいスピーチでした。これを世界に発表するのだと、博士はICRPの本拠であるロンドン、WHO(世界保健機関)本部のあるジュネーブ、IAEA(国際原子力機関)本部のウィーンなど世界中を飛び回り、一九九七年秋に世界の専門家六百五十人を集めて「低レベル放射腺の身体影響専門家会議」、いわゆるセビリア会議の開催にこぎつけた。会議ではICRPと激しくやり合いました。あまり激しくやったものだから、アメリカ国内でずいぶん圧力がかかったようです。

渡部 日本の原子力安全委員会もLNT仮説に基づくICRP勧告に従っているのが大きな間違いですね。

砂糖や塩は人問には絶対に必要なものだけれど、一度に何キロも摂取したら、それは体がおかしくなる。放射線もそれと同じですね。一度にドンと浴びたら危ない。ただし、それは原爆が破裂するか原発の炉が壊れるかしない限り起こらない。福島では炉は壊れていませんからね。

もしも東電の経営者が「法律にしたがって国に補償してもらう」と言い出したらどうなっていたか。東電が原発事故で与えた被害はゼロなんですよ。放射線で死んだ方は一人もいません。病院に担ぎ込まれた人もいない。「たくさん死んでいるじゃないかー」「福島をどうしてくれる!」と批判する人が多いけれど、それは東電の責任ではない、すべては強制退去のためですよ。一にも二にも菅直人政権の政策の過ちであって、東電の関知しないところです。

現に、東電の社長が株主総会で「国に補償をまかせるという選択肢もあります」と言いました。そういう法律があるそうですからね。それをしなかったのはなぜか。

東電のような大企業の社長になるような人は頭もいいし、仲間も多い。つまり、ヘッドもハートもいい。しかし、ガッツがないのです。まるで原爆が落ちたかのようにびっくりして、民主党政権下の政府のいいなりになってしまった。

話が大きくなるけれど、日本の敗戦と言う悲劇も、結局、海軍にガッツのある人がいなかったからです。ワシントン会議で軍備縮小に賛成した加藤友三郎のような人がいなくなると、いつのまにか景気のいいことを言う艦隊派が出てきて、陸軍が三国同盟を主張し始めても、最後まで反対する海軍大臣はいなかった。

海軍は石油がなければ一隻も動かせない。そんなことはわかりきっているのに、石油を持っている国を敵に回して、石油のないドイツとイタリアと結ぶという間抜けな同盟、そんなものが結べるかと言い切れる人がいなかった。果たして石油が止められると、いよいよ戦争するしかなくなりました。

あの時、近衛文麿首相は海軍大臣・及川古志郎に聞いているんです。アメリカと戦争しても大丈夫かと。しかし、及川はイエスともノーとも答えず、首相に判断を一任すると逃げてしまった。ガッツがない。

考えてみると、この前の大戦における海軍は、艦隊司令長官のレベルになるとみんなガッツがない。真珠湾攻撃のときも第三次攻撃を行わず、自分たちの船に被害が出ないうちにと引き上げてしまった。

第一次ソロモン海戦だってそうです。あのときの第一の目的は「敵輸送船団の撃滅」でした。ところが、護衛の米巡洋艦艦隊をほぼ全滅させておきながら、輸送船団を攻撃せずに退却してしまった。米空母から敵機に攻撃されるのを恐れたのです。逃げずに攻撃していれば米輸送船団は間違いなく壊滅していた。そうすればガダルカナルにいたアメリカ軍は武器も食糧も断たれて孤立し、戦いの様相は一変したでしょう。そういう例がたくさんある。

服部 そのとおりです。ミッドウェーで船をぜんぶ沈められ、海軍はもう戦いようがなくなった。この昭和十七年の時点で勝敗は明らかだったのに、なぜ「負けた」と言わなかったのか。それもガッツがなかったせいですよ。ぶん殴られようが何をされようが、ひと言「負けた」と言いきえすれば何百万入が死なないですんだ。それを昭和二十年まで引っ張り、原爆を落とされ、さらに米軍の沖縄上陸を許して島の住民が殺されるまで、誰も言えなかった。

渡部 考えてみると、日露戦争以後、大東亜戦争まで日本はまともな戦争をしていなかった。平和な時代には成績優秀で人望があれば出世できるが、ガッツは量りようがない。日清・日露戦争当時の司今官たちは武士の子として育っているから、ものが違う。ガッツにあふれていたから、世界中が冷ややかな目で見てもシナに勝てるということがわかったし、日露戦争でも戦況が有利なときにスッと引いて、溝和に持ち込んだ。

福島原発の悲劇も、東電の経営者にガッツがなかったことに起因するのではないか。中部電力だってガッツさえあれば、菅直人が浜岡原発を止めると言ったときに「その必要はない。うちは大丈夫です」と言い切れたはずなんですよ。

服部 そうですよ、どうして技術者が「ふざけるな」と言えなかったのか。民主党政府に抵抗できなかったのか。

「油・断」を忘れるな

渡部 原発事故の直後、「原発が危ない、危ない」と騒いだ科学者たちは時流に乗って商売をし、自分の本を売ろうとしただけです。そのときに「ちょっと待て」と異議を申し立てた服部先生や高田先生はガッツがあった。その人たちのおかげでようやく風向きが変わったと思ったら、トリックスター小泉が出てきた。ひさびさにスポットライトを俗びたいだけなのかもしれないが、言っていることに筋が通っていないから、こんなものはそのうち消えます。

原発をすべてやめろというけれど、エネルギーをどうするかについては、彼は何も言わない。エネルギーこそ、このあいだの戦争の最大にして唯一の原因だったではありませんか。そして、戦後の日本が奇跡の復興を遂げたのは、中東で豊富な石油が発見されて安価な石油が手に入ったからではないですか。ところが、石油産出国の力が強くなりOPECが設立され、石油価格が高騰するオイルショックが起こった。そういう経緯をたどって、原発でようやくエネルギーの安定供給が可能になったというのに、どうしろというのか。

とにかく、まず「原発ゼロ」にしてしまえば、知恵のある人がいい案を出してくれると言うけれど、そんなもの五十年後になるかもしれませんよ。原発が稼慟していれば必要のないお金が、その間、毎日百億円以上も出ていくのです。

百億円といわれてもなかなかピンときませんが、尖閣諸島を守るために、阿倍首相が防衛費を一千億円増やそうとしたら、財務省が反対して結局四百億くらいになってしまった。その防衛費の増額分が四日で消えてしまう。いかに無駄な金が出ていくか。このことを元首相として考えないのは、国賊としか言いようがない。こういう無責任な男を担ぐ朝日新聞、毎日新聞、東京新聞その他は国賊新聞です。

服部 ルーズベルトは日本に子エルギーを与えまいとした。日本は進退きわまって真珠湾を攻撃しました。日本の強さにアメリカは驚いた。日本民族というのはほうっておいたら危ない。日本が徹底的に戦意を喪失するまで叩け。それには原爆だ。二度と自分たちに刃向かう気を起こさせまいとしたのです。

ところが、日本は経済大国として蘇ってしまった。だから、戦前と同じようにエネルギー、つまり原子力を断とうとしている。エネルギーを断てというのは国家を根本からつぶそうという思想です。それにつられて踊っているのが小泉だ。アメリカには「二度と日本を立ち上がらせるな」と言う輩がいまでもいるんですよ。

渡部 結局、世界を動かしているのはエネルギー問題なのです。イギリス人が石炭の新しい使い方を発見したときに産業革命が起こりました。これが白人の世界征服の第一歩だった。そうして第一次大戦時に石炭から石油への大きなエネルギー転換が行われた。日本には石炭はあったが、石油はない。それが日米開戦のそもそもの原因になった。

いまいちばんの国際問題は中国の台頭で、このまま中国、それに同じく膨大な人口を有するインドの経済活動が拡大の一途をたどれば、地球の自然エネルギーが絶対約に不足することは目に見えています。だから中国はなりふりかまわず、領海を浸してでも天然資源をあさっている。エネルギーを制する者が世界を制する。エネルギーが歴史を動かすのです。

服部 原発が止まり、電気料金が高騰したら、中小企業はぜんぶ日本から逃げ出します。そうしたら日本は終わりです。

渡部 それに、原発をすべてなくしたら、就職先がないから、日本に原子関係の学問の研究者がいなくなる恐れがある。そうなったら大変ですよ。イギリスには日本の日立から買った原発もあるのですが、新しい原子炉に中国の技術を入れるという記事が産経新聞に出ていました。将来は日本と中国が世界の原子炉を握るんじゃないかという推測がある。イギリス人は、ぜひ日本にがんばってほしいと言っているそうです。そんなときに原発をなくしたら、日本の損失になるだけです。

原子力の安全性についてですが、一兆キロワットのエネルギーを出すためにどれだけ人が死んでいるかという調査結果を、権威ある「サイエンティスツ・フォー・アキュレイト・ラディエーション・インフォメーション(SARI)」が発表しています。それによると、原子力では九十人が死んでいる。これを一とした場合、石炭で死ぬ人は中国では三千百十一倍。世界平均では一千八百八十九倍。アメリカは比較的被害が少ないのですが、それでも二百六十七倍。石油では四百倍です。天然ガスでも四十四倍。だから原子力は最も安全なエネルギーなのです。

もっとも、小泉さんは原発が危ないとは言わず、核廃棄物の捨て場所がないと言っている。思うに、炭鉱で選炭したあとのボタ山のようなものを想像しているのではないか。しかし、核廃棄物はコンパクトなものだし、それほど地下深く埋める必要はない。安全な深さまで埋めて、その上に水を張って湯でも沸かせばラジウム温泉になる。

服部 水につけても従来のものより漏洩性がないコンクリートというのがいま考えられていて、そういうもので包むだけでいい。水につかったって、何十万年たっても何ともないんです。ものすごくコンパクトですよ。並べたって大した面積ではない。

「低レベルの放射線は健康を増進させ、免疫系の活勣を高める」というホルミシス効果を提唱したミズーリ大学のトーマス・D・ラッキー教授は、コンクリートに詰めた放射性廃棄物を置物にして、居問に飾れば必ず長生きできると言っています。DNAは放射線が大好きですから、適当な放射線を浴びたほうが体にいい。このあいだ日本に招聘したフォックス・チェース癌センターのモハン・ドス博士も、高レベルの放射性廃棄物は貴重品だと発言していました。

渡部 高速増殖炉「もんじゅ」はぜひとも成功させなければいけませんね。中性子を高速で使うことによって、燃えないウラン238をブルトニウム239に変えて増殖できるし、原発の使個済み燃料から回収したプルトニウムを燃料として再利用できます。「もんじゅ」が完成すれば世界のエネルギー問題が解決する。世界史を変えることになると思います。

海中ウランを活かせ

服部 実は、海の中に四十五億トンのウランがあるんですよ。陸上では、どこを掘ったって五百万トンが限界です。その海中のウランを特殊な樹脂の網で吸着して取る。その技術は日本が世界一なんです。日本原子力研究開発機構の高崎研究所がみごとにやってのけた。陸上で掘るウランに対して一グラム当たり十倍の金がかかるのですが、これを網でとって高速増殖炉の開発を成功させれば、それでも経済的に十分成り立ちます。

現在、実用化されている原子炉は、ウラン235を使っているのですが、それはウランの〇.六パーセントをエネルギー源として役立てているにすぎません。ところが、劣化ウランと言われているウラン238は、天然ウランの九九パーセント以上を占めているのです。そのウラン238をプルトニウム239に変える高速増殖炉に成功すれば、ウランのおよそ九〇パーセントをエネルギー源にすることができる。つまり、現在のウラン一グラムが百五十倍の価値を持つことになるわけです。

海中にある四十五億トンのウランは、海に囲まれた日本のためにある。高速増殖炉とは日本のためにあるアイディアです。ずっとエネルギー資源に悩まされてきた日本が、世界一のエネルギー資源国に変わるのです。それに日本人は気づいていない。

渡部 服部先生は小型原子炉も考えておられましたね。

服部 それは世界のためです。日本は枝術力が段違いですから、大型だって全然かまわない。ところが、全世界となると、技術もない、運転員もいない。世界ではエネルギー不足で飲料水や食料がままならないために毎日何万もの人が死んでいます。それを救うのが小型でシンプルな原子炉なんです。

炉心サイズを非常に小さくすると、事故時に異常な温度上昇があれば炉心反応度が確実に下がって臨界喪失になり、原子炉は自然に停止します。これこそ本質安全です。

こうした本質安全を求める心を良しとして、神が贈り物を与えてくれました。どういうことかというと、小さな炉心であれば、電気がたくさん必要だというときには、熱エネルギーが発電機側に持っていかれるので原子炉が冷える。冷えれば原子炉冷却材の密度が上がって、核分裂が盛んになって、パワーが上がります。電気需要が減ったら原子炉の温度が上がり、密度が下がって中性子が漏れやすくなって核分裂が下がり、出力が低下する。つまり、電気需要の変化にみごとに追従する素直な原子炉なんです。制御棒も運転員もいらない。まさに神の贈り物以外の何ものでもありません。小型原子炉は、まさに奇跡的な神の贈り物です。私は神を信じるようになってしまいました。これを求めている国は百ヵ国に上ります。

渡部 最後に付け加えさせてもらえば、原発ゼロで騒いだ人たちには、小泉さんをはじめとして、菅直人、小沢一郎などなど、韓国との関係が深いと言われる人が多い。これはなぜだろうか。これは私の推測ではありますが、韓国経済と関係があるような気がします。

韓国経済を支えているサムスンも、主力はスマホだけですから、もう先が見えてきた。軽電機の分野なら、より労働力の安い国でもできる。では、次に韓国が輸出できるものは何かと考えると、いちばん金額が大きくて儲かるのは原発です。しかし、原発で日本と競争しても勝てないに決まっている。だから、日本が脱原発に向かえばこれほどうまい話はない。その韓国の意思に乗って動いているかのごとき人が多いのは残念です。

ただ、放射線が危ないとひたすら信じている善意の人々は啓蒙していかなければなりませんね。小泉さんに反対するには、廃棄物の処理は可能であるということを主張する必要がある。そのためにも、服部先生のようなガッツある科学者の方々に、ますますがんばっていただくしかありません。